大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)284号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決取消事由の存否について判断する。

前記の当事者間に争いのない請求の原因三によれば、審決は、第一引用例との対比において本件考案の技術思想は、「外周面に合成樹脂を被覆した可撓性を有する螺旋状電線管の一端の被覆層を剥離してこの部分に螺着したフランジをもたない中リングとゴムパツキングとにより合成樹脂被覆可撓電線管と継手との連結に際して該電線管の離脱を防止するとともにほぼ完全な防水性を得るようにする」にあるものと認定したうえ、第二引用例は、本件考案のように合成樹脂を被覆した螺旋状電線管用のものでなくて、伸縮蛇腹管用のものであり、本件考案の合成樹脂被覆可撓電線管の先端の被覆層を剥離した部分に螺着される中リングに対応するものは、蛇腹管の先端に嵌合される二つ割環状体であつて、その全体構成からみてこれに本件考案の前記のような技術思想があるとは認められないといい、このことを理由として、本件考案が第二引用例に基づいてきわめて容易に考案することができたものとすることはできないとし、さらに第一引用例と第二引用例とを総合勘案してもこれらに基づいて本件考案がきわめて容易に考案することができたものとすることはできないとしている。

なるほど、成立について争いのない甲第五号証、第六号証によれば、第二引用例の継手は、審決のいうとおり、伸縮蛇腹管用のものである点及び本件考案における中リングに対応するものが、本件考案におけるように先端の被覆層を剥離した部分に螺着されるものではなくて、蛇腹管の先端に嵌合される二つ割環状体である点で本件考案と相違するものと認められるが、それが可撓金属電線管である点では第二引用例のものも本件考案におけるものと異なるところはなく、また、中リングが二つ割環状体である点も、第二引用例のものが合成樹脂可撓管ではなくて、伸縮蛇腹管を採用したことに伴なう当然の形式上の差異から来るものであつて、これをもつて第二引用例がその技術思想において本件考案と異なるものであるとすることはできず、更に、右甲号各証によれば、第二引用例の継手は、本件考案でいう離脱防止用の中リング、弾性体リング、締付ナツト、継手本体を備えた防水型の継手であり、しかも、本件考案のように、弾性体リングは、締付ナツトの鍔部内面と当接するばかりでなく、継手本体の端部及び中リングとも当接する構造のものであることが認められる。

そうすると、第二引用例の継手も、本件考案と同様な構成をとり、本件考案と同様な技術思想を備えているものということができる。

してみれば、審決が第二引用例の継手について本件考案の技術思想があるとは認められないとしたのは誤りというべきであり、この誤つた判断は、本件考案が第二引用例に基づいてきわめて容易に考案することができたものとすることはできず、また第一引用例と第二引用例とを総合勘案してもこれらに基づいてきわめて容易に考案することができたものとすることはできないとの審決の結論に影響を及ぼすものと認められるから、その余の争点について判断するまでもなく、審決は違法として取消されるを免れない。

三 よつて、本件審決の取消を求める原告の本訴請求を正当として認容することとする。

〔編註その一〕 本件登録実用新案に関する事項は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

被告らは、登録第一一六八七八一号実用新案(名称を「合成樹脂被覆可撓電線管用継手」とし、昭和四五年一一月一一日登録出願、昭和五一年七月二四日出願公告、昭和五二年四月一三日設定の登録がされたものである。以下、この考案を「本件考案」という。)の実用新案権者である。原告は、昭和五二年七月一四日被告らを被請求人として、本件実用新案登録を無効にすることについて審判を請求したところ、特許庁昭和五二年審判第九六五二号事件として審理され、昭和五五年八月四日右審判の請求は成り立たない旨の審決があり、その謄本は同年八月一八日原告に送達された。

二 本件考案の要旨

金属螺旋管9の外周面に合成樹脂被覆層10を設けた電線管eの一端の被覆層10を剥離して内周面に雌ネジ部7を有する中リングcを螺着し、その中リングcを、適宜のネジ部1を有する取付筒2と、雄ネジ部3を有する嵌着筒4とよりなる継手本体aの嵌着筒4に嵌着し、予め電線管eに挿着された弾性体リングdを、嵌着筒4端部に圧接させ、同じく予め電線管eに挿着された鍔部5を有する袋ナツト状締付ナツトbの雌ネジ部6を嵌着筒4の雄ネジ部3に螺着させ、締付ナツトbを回動させることにより鍔部5内面と嵌着筒4の端部の間に介在させた弾性体リングdを押圧し、更に弾性体リングdと中リングcと圧接させ本体aと電線管eとの防水を行うと同時に中リングcによつて電線管eの軸方向の離脱を防止せんとした合成樹脂被覆可撓電線管用継手。(別紙図面(一)参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(一)

<省略>

別紙図面(二)

<省略>

別紙図面(三)

<省略>

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